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好きでニートなわけじゃないよ。

立ち上がらなきゃいけないのはわかってる。けど・・・

落語聞いてみた。タイトル もう半分

 

[今日聞いたお話]

昨日の古今亭志ん朝氏のシリーズ。今日聞いた話はタイトル、もう半分。

 

 

[ストーリー]

 

 

最初は、夏は怖い話が多いのはなぜか?

 

人は化学的じゃないものに惹かれるからか?

 

多分誰でも怖い話っていうのは持っているものだから、という前振り

 

古今亭氏の持ち話は、

 

家で寝ていたら、一緒に寝てている家内共いびきがすごい

 

これでは眠れない。と古今亭氏は書斎で寝ることにする。

 

ウォークマンで好きなジャズを聴いていたら、

 

誰かが自分の肩をポンポンと叩く。

 

なぜだ?家内はもう寝ているはず、

弟子の誰かか?いやこんな時間にくるはずがない。

では誰が・・・・

 

恐怖を振りはらい、いきなり振り向くと、

奥さんがびっくりして腰を抜かしていた。

 

なんでこんなところにいるの?と聞くと、

 

「何でって、朝の6時に起こしてっていったじゃない」

 

時計をみたら朝6時、昨日自分で伝言していたのを忘れていたのだ。

 

もう一つは、地方公演でホテルに泊まった時の話、

疲れたな〜と部屋で休んでいたら、

 

目の前におばあさんが無言で立っている・・・

 

なぜこんなところにおばあさんが・・・

 

と恐怖に駆られたところ

 

マッサージを頼んでいたのを思い出した。

 

怖い話ではなくて、恥ずかしい話である。

 

小話で笑をとったところで話は変わり、

 

 

江戸時代、ある宿場町。

10人も座ればいっぱいになってしまう小さな居酒屋、

亭主と女房の二人で住んでいる。子供はない

 

女房はあまり営業に積極的でなく、

 

店の切り盛りは亭主がやっていた。

メニューもあまり豪華というわけじゃないし、

料理も普通なのだが

 

正直な性格の亭主は出す酒の量をごまかしたりはしなかった。

そんなわけで酒飲みには好評の店だった。

 

そんな店も夜はあまり客足が少ない。

酒飲みたちが立ち寄るのは大概仕事が終った後の夕方、

それ以降の時間、店のある通りに来る人は、その先の

遊郭に用があるので、そこで酒を飲むため

居酒屋には来ないのだった。

 

今日はもう店じまいかな。

そう思っていたら、みすぼらしい格好をした一人の老人が入ってきた。

近くでボロい八百屋をやっている爺さん。

 

彼は酒を半分ずつ小出しにするよう注文する変わった人だ。

 

なんとなく疑問に思った亭主はなぜ半分にするのか?と聞いてみると、

 

「例えば酒を三本注文するだろ?

 そしたら、ビンを三本出されるよりも、

 半分ずつ、6本のビンに入れてきてもらったほうが、たくさん飲んだ気がするんだ」

 

酒飲みの卑しさでさぁ。と自虐する爺さん。

僕にもなんとなくその気持ちはわかる気がする。

 

「用事が終わって、まっすぐ帰ればいいんですが・・・

  これだけは止められてなくてね。」

 

爺さんが帰った後、

店じまいを始めようとした亭主が、

彼がいたところのたるを片づけようとしたら、何やら荷物が置いてある。

 

ボロボロの今朝布に包まれていたのは、

 

25両づつに分けられた、

 

50両もの大金。

 

爺さんの忘れ物である。

なんであの爺さんがこんな大金を?そんな疑問が浮かんだが、

 

亭主は慌てて、奥にいる女房に声をかける。

 

「悪りぃけど、ちょっと店を開けるよ。」

 

「何で?」

 

「さっきの爺さんが50両忘れて行っちまったんだ。今から追いかければ、

追いつくだろうから、ひとっ走りしてくるよ。」

 

「ちょいと待ちなよ。今からじゃ間に合わないさ。いいじゃないか。

ちょっと預かっておけば。」

 

「預かっておけば。ってお前・・・50両も置いといたら、何か間違いがあったら

いけねぇよ。」

 

「だから・・間違えちまえばいいじゃないか。そんな大金置いて来るほうが

悪いんだよ。」

 

「そんなこと言ったってこんな大金無くした爺さんも困っているだろう。

 

 

「でもその金があれば、バイトがやとえるだろう。

若い女の子でも雇えば、客も増える。それで、店をでかくできる。

金さえあれば・・・・って

あんたも言ってたじゃないか。」

 

「だけど、ネコババした金で、デカくしたって、そんなのうまくいきっこない」

 

「あんたはそんなバカ正直だからいけないんだよ。

 

私だって、若いころは正直に生きていれば

 

いつかは貧乏から抜け出せると思ってたよ。けど、貧乏は変わらない」

 

「そんなこと言ったって、爺さんが戻ってきたら・・・」

 

「あんたは本当にバカだね。シラを切ればいいのさ。知らぬ存ぜぬで通せば、

  爺さんだって諦めるだろう。

 

「・・・・そんなことは俺にはできない。」

 

「だったら、あんたは奥に引っ込んどけばいいよ。あたしがうまくやるさ。」

 

 家内の口車に乗ってしまった亭主。席をはずす。

 

そうしたら、さっきの爺さんが真っ青な顔でやってきた。

 

「夜分遅くすまねぇ、がここに今朝布が置いてなかったか」

 

「さぁちょっとわかりませんね。」

 

「そんなバカなことがあるか。確かにここに置いたのに・・・

 そうだ。旦那だ。旦那はどこだ?」

 

「今は席を外しています。」

 

「あんたじゃラチがあかない。旦那に聞いてくれれば。

 必ずとっといてくれるはずだ。」

 

「今はおりません」

 

「じゃあ帰ってくるまで待たせてくれ」と食い下がるじいさん。

 

「そんなに大事な物って・・・何を無くしたんです?と尋ねる家内。

 

すると、爺さん、しばらく間があった後、話し始める

 

「実は・・・私は、

今でこそみすぼらしい格好をしているが、

 

昔はそこそこ立派な八百屋をやってまして・・・

 

そこで酒好きがこうじて、しくじっちまって・・・

 

それで、夜逃げ同然でここまできて、よちよち歩きでついてきた娘が、

 

いつの間にやら20才になりまして・・・

 

何か働き者の亭主でも見つかればいいな。とおもっておりましたけども、

 

その娘が

 

「お父さん、その年で天秤担いで、野菜売るのも大変だから」と言って、

 

 

自分から吉原に身を沈めまして、それで作ってくれた金なんです。

 

で金ができたから通りにこい。と言われた帰り道。

 

娘が

「お父さん頼むから、今日だけはどこへも寄らずに家に帰ってくださいね。」

 

と泣いて頼まれたんですが・・・どうにも我慢できずに」

 

あの金がないと、ばあさんにも、娘にも、顔が立たない・・・

 

 

ふと爺さんが、後ろを振り返ると亭主が立っている。

 

「旦那!」

 

「お前さんいつ帰ってきたんだい?いるならいるっていいなよ」

 

「この人店にお金忘れてきちゃったんだって。あんたそんなの見たかい?」

 

「・・・・」

 

「旦那。間違いなく置いたんだ。ボロボロの今朝布だ。」

 

「見なかったよね?」

 

「・・・・・」

 

「そんなのなかったよね?」

 

「・・・・ああ、見なかった。」

 

「そんなバカな。たるの上に置いたんだ。旦那だって見てたはずだ。」

 

「いや・・・なかったよ」

 

「そんなバカな。後生だから、返してくれ。頼む。」

 

「往来にでも落っことしたんじゃないのか?」と追い返す亭主。

 

抵抗する爺さん。

いつしか取っ組み合いの喧嘩になり、爺さんのげんこが亭主の頭にあたり、

頭にきた亭主思わず突き飛ばしてしまう。

 

それでも中に入ってこようとする爺さん。

みぞおちを棒でつき、店の戸を閉めてしまった。

 

 

「ちくしょう。あいつら人の金を・・・覚えてやがれ。」

 

泣く泣く、店を後にする爺さん

 

「どうだい?いなくなったかい?あの爺さん」

 

「ああ」

 

「やった!うまくいったね。」

 

「何がうまくいったものかよ・・・聞けばあの金、娘が女郎になって

作った金だっていうじゃないか。そんなものをだまし取って大丈夫かよ?」

 

「なにを言ってるんだい。その娘だってこれから客を騙すんだ。

おあいこだよ。」

 

「お前は本当に、勝手なことを言って・・・俺はやだなぁ・・・こんなの・・・」

 

「お前さっきの金、俺によこせ。やっぱり追いかけて返してくる。」

 

「なにを言ってるんだよ。中途半端なことすんじゃないよ。今更返しても恨まれるよ。」

 

「いいから、このままじゃ俺は生涯後悔する」

 

そう言って家内から金をふんだくり、夢中で駆け出し、千住の大橋で

爺さんを見つけた。

 

「おじいさん!」

 

呼び止められたおじいさん、亭主の顔を見ながら、橋の欄干に足をかけ、

そのまま水底へ落ちてしまった。

 

助けたくても、泳ぎ方がわからない。仕方なく、店に帰ってきた。

 

「なんだい?渡せたのかい」

 

「いいや、じいさん。橋から飛び降りちまった。」

 

「あら世話がなくていいや」

 

家内は平気だが、亭主は気になって仕方がない。しかし今更どうしようもない、

仕方なく、その50両で商売を始めたら、悪運が強いのか、うまくいった。

 

店が忙しくなっていくうちに、亭主もじいさんのことなど忘れてしまった。

 

一年たち、二人に待望の子供が出来た。産婆が取り上げて、

 

「元気な男の子ですよ」・・・だが、顔を見てみると何かおかしい。

 

なぜかシワだらけ、まるで老人である、しかも、どこかで見たことが・・・

 

「おい、この子、あのじいさんにそっくりだよ。」

 

「そんなバカな。」

 

と子供の顔をみた家内。びっくりしてそのまま倒れてしまう。

 

そして二度と起き上がってくることはなかった。

 

死んでしまったのである。

 

「これはじいさんの祟りにちがいない」

 

そう思った亭主はその子を、逆に可愛がって育てることにした。

 

ところが、母親代わりに雇っていた乳母が次々と辞めていく。理由を尋ねても、

誰も答えてくれない。

 

「なんでそんなすぐ辞めるんだ?給料に不満があるのか?」

 

「いいえ給料の問題ではなく」

 

「じゃあなんで?」

 

「私の口からはとても」

 

「いいから話してくれ、やめた理由がわからないんじゃ、次に生かし用がないよ」

 

「じゃあ、私、今日は我慢して、坊やと添い寝するんで、影から

旦那様見ていてください」

 

その晩、寝室の襖の隙間から様子を見ていると、子供が

乳母の寝息を確認してすうっと起き上がり、あたりの様子を確認してから、

 

行灯の下の油指しをとり、ペちゃペちゃと舐め始めた。

 

びっくりした亭主は恐怖も忘れ、襖を開けて

 

「こんちくしょー!」

 

すると子供が、

 

「もう半分くださいな」

 

もう半分というお話でした。

 

[感想]

 

財布拾って自分の中かの天使と悪魔が葛藤するタイプの話だ。

 

それにしても悲しい。

しかし、登場人物の全員が憎めない。

一見悪い奴に見える家内も、貧乏暇なし、という現実をしっているからこその行動。

その気持ちはわかる。気がする。

 

じいさんも女郎になった娘に忠告されたにも関わらず、酒を飲んでしまう。

その罰が降ったのだ。というなら、それまでだが、彼の気持ちはわかる。

 

それにしても、古今亭氏の表現力はすごい。

 

金を取りもどしにきたときのじいさんの

切羽詰まった感じが伝わってきたし、

 

負い目を感じている店主、と別に気にしていない風の家内の演じ分け、

 

そして、子供が生まれたときのちょっと年取った感じの

声の変化も伝わってきた。

 

これで40分以上も喋り続けるのか・・・実に大変だ。

 

それにしても、

 

「世話がなくていいや」の部分で笑いが起こったのが、

落語の奥の深さである。今時なら、不謹慎厨が湧いてくるだろう。

 

人間の弱さと人情、そのいっぺんを垣間見た・・・気がした。