キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

ジョン・ウィックチャプター2 ぼっちの星キアヌ、完全復活。

 スピード、マトリックスといった超大作に主演するも

数々の理不尽なストレスによる激太り、

公園のベンチで一人、サンドイッチを食べる姿を目撃されるなど

その哀愁漂う姿がなんとなく、イケテナイ俳優、キアヌ・リーブス

かつての栄光は消え去り、このままだと引退じゃね?との噂さえあった

彼だが、実生活の苦労と、なんとなく憎めないキャラクター

何より、アクションを心から愛するその姿勢を、

映画の神様は見捨てなかった。

ぼっちの星。完全復活

 


映画『ジョン・ウィック:チャプター2』予告

前作のあらすじ

ロシアマフィアのバカ息子ヨセフに妻の形見であるベーグル犬を殺された元、

最強の殺し屋、ジョン・ウィック(キアヌ)

激おこした彼は、街を支配するマフィアにたった一人で戦いを挑む。

 

その5日後

今作、チャプター2では、ゲスイタリアン、サンティアーノの依頼を断り、

その腹いせに、妻との思い出が詰まった家を爆破され、怒りのボルテージは

ムカ着火ファイヤーとかす。

前作の敵はロシアマフィアだけ(それでも結構な人数だったけど)だが、

今回はゲスイタリアンがジョンの首に700万ドル。(約7億円)の賞金を

かけたことで、世界中の殺し屋に狙われる羽目になる。

 

チャプター2単体でも十分たのしめる。

一応チャプター2ということで、前作を見ていなければ楽しめないの?

と心配する方もいるかもしれないが、そんな事を気にする必要はない。

ぶっちゃけ、ストーリーなんてあるようでない。

なんだったら、予告を見れば大筋はわかってしまう。

しかし、この映画は劇場で観るからこそ生きると思う。

内容の8割をアクションに降っており、そこを目当てに見に行くのであれば

間違いはない。

 

 一言で言えば、キアヌが人を殺しまくるだけ。だけど、逆にそのシンプルな構成が

アクション映画としてのテンポの良さだす事に成功していて、

見ている人を飽きなさせない。

実に80人以上の人間を殺すジョンだが、

市民に紛れて、襲ってくる戦闘員に的確にヘッドショットを決める腕前

銃と多数の国の柔術を組み合わせた「ガン・フー」は

まるできちんと振り付けされたダンスのようであり

人殺しであるにもかかわらず、「美しさ」を感じてしまう。

さすが撮影に臨むために訓練で撃った実弾3万発は伊達じゃない。

これ以外にも

ナイフを主体にした「ナイ・フー」今作では

鉛筆で人を殺した。という噂が嘘でない事を証明してくれる。

車を武器にした「カー・フー」このカースタントもキアヌ本人が演じている。

これには、藤岡弘、もにっこりである。

悪役のキテるキャラクター

悪役たちも、かなりキャラが濃く描かれており

ジョンをマジで殺そうとしてるんじゃね?と思わせるほどの気迫で襲いかかってくる。

僕が好きなのは、地下鉄でのエリート殺し屋ハゲ、カシアンとのバトル。

そんなナチュラルに撃ち合うな。と心の中で突っ込んでしまった。

もちろん名もなきモブですら 

それぞれきちんとした見せ場があり、キレッキレの動きをしている。

相当練習したんだろうな。

 

 良い意味で漫画っぽい世界観。

裏社会、といえども、多数の人間が暮らしている以上、そこには明確な

ルールが存在する。

例えば、殺し屋が利用するホテルコンチネンタル、

ここでは、一切の殺人が禁止されており、それを破ると、オーナー、

ウィンストンに殺し屋協会から破門されてしまう。

このルールが今作でジョンをさらなる修羅の道へ導くことになる。

さらには、裏社会をコントロールする12組のマフィアで構成された組織

主席連合、NYの情報王、ホームレス、キング*1

など、物語が、漫画のように、いい意味でわかりやすくできている。

 脇役も濃い。

殺し屋にとって、殺人は、「仕事」であり、それをサポートする

職業も存在する。

 

前作の序盤でバカ息子ヨセフにジョンがいかに「ヤバイ」のかを

一瞬で理解させたオーレリオ。一応、車の修理屋だが、

主に盗難車の解体をしている。車の事なら何でも知っていて、

ジョンの愛車、マスタングも彼が修理している。

*2

ホテルコンチネンタルの受付を担当するマネージャー。

一見ただ受付をしているだけ。に見えるが、銃声がしようが、ボロボロのおっさんが

いきなり現れようが、

けっして動じずに、フロントの業務をこなす姿勢は意識高い系の鏡といえよう。

この二人は仕事に関係なくジョンの味方をしてくれる数少ない人物で

かなりの良キャラである。

 

 殺された死体を、証拠を一切残さず片付ける掃除屋。

表向きは害虫駆除業者のふりをした車で現れるが乗っているのは

ガタイの良すぎる黒人で、全然カモフラージュできていない。

*3

 

近隣住民からの通報でジョンの家にきた警官、ジミー

ジョンに「騒音の苦情か?」と聞かれ死骸だらけの部屋を見つつ

「騒音の苦情だ」とギアスでもかけられたように納得して帰ってしまう。

その際「また仕事してるのか」のセリフを今作でもジョンに投げかけていて

またお前出てきたのかよ。とクスリときた。

 

ジョンが使う武器を文字どうり「テイスティング」する武器ソムリエ

まるでワインのように銃を説明する姿は、田崎真也氏もにっこりである。

扱っているものは、物騒この上ないが。

 

 他にも無茶のきく闇医者や、戦闘用のスーツを仕立てるテーラーなど

全員が脇役ならではの個性を発揮しており

一回観たら忘れられない。

 小道具へのこだわり

ジョンが使う銃はもちろん

出てくる武器はそのどれもが改造されている。

ガンマニアでなくても、あれはどんな銃なんだろう。と見終わった

あと検索してしまう。

同じように車に詳しくはないけど

ジョンの愛車、69年式マスタングはとてもかっこいい。

バカ息子が欲しくなるのも納得である。

 

 最強だが、孤独な男ジョン・ウィック

超人的な活躍を見せるジョンだが、けっしてロボットではない。

高いところから落とされれば、打ち身になるし、弾丸が通らないスーツも

至近距離から撃たれれば、ダメージが通る。

満身創痍で戦い続けるその姿と、キアヌが持つ、どこか孤独な、寂しげな雰囲気が

ジョンの強さを嫌味にせず、同時にリアリティーを持った

どこか応援したくなるようなキャラクターを作り上げている。

なめてたおっさん、実は殺人マシーン

確かに、最近のCGをガンガン使った映画に比べたら、ぶっちゃけ地味である。

しかし、シンプルだからこそ、こだわりの映像が盛りだくさんで

R15指定を受けただけのことはある。

ジョンウィックのような映画を巷では

「なめた奴が実は殺人マシーンでしたムービー」と言う。らしい。

なるほど、社会になめられっぱなしの僕のような人種にはドストライクという

わけだ。

もし、あなたが社会にたいして鬱憤がたまっている。というなら

ぜひ劇場へ足を運んで欲しい。嫌いな上司の顔を敵に重ねれば

映画館ならではの爆音と大画面の中で、ジョン・ウィックがそいつの

頭をあなたのストレスごと吹っ飛ばしてくれるだろう。

 

 

 

*1:

まさかのローレンス・フィッシュバーン

またマトリックスのコンビが観れるとは。

*2:

演じるジョン・レグイザモ氏は数々の作品に出演している。僕は知らなかった。

個人的にはシェフ・三ツ星フードトラック始めました。のコックの役が好きだ

*3:こちらは無印、ジョン・ウィックのみの登場