キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

NASAが宇宙人がいました。なんて報告すればニートは市民権を得られるかもね。

見上げた空の上のはるか彼方。

どこまで広がっているのかわからない

暗闇。

 

そこになにがあるのか。

地球以外に生き物はいないのか

そんな疑問を持っているのは

人間だけなのか。

その問いに答えを出そうと

必死になっている人たちがいる。

 

自分の生活に直接関わらない

なら、どうでもいい。

そう言う人もいる。

いや、この世のほとんどの

人が興味のない話題かもしれない。

しかし、

ある人種にとっては

これほどの大事はない。

 

人の輪の中に入れない

人と何かが違う。

絶対に埋められない何かが。

自分は本当に地球人?

そう感じている人には。

 

 奇人、変人、宇宙人

 

メン・イン・ブラックという映画をご存知だろうか?

缶コーヒーのCMで有名なジョーンズと

ウィルスミス主演のSF映画

 

それまでファースト・コンタクト

が主流だった宇宙人のイメージを覆し

 

宇宙人が都市に住んでいる。という

トンデモストーリーと、銀ピカのクールな武器。

主演の二人のテンポのいいやりとりで

全米が湧いた作品。

 

日本でもヒットし

小さい頃は

スーパーの駄菓子コーナーに

ぶら下がっているメガネを黒く塗ったり

マーブルチョコの筒にアルミフォイルを

巻いて、記憶消すエージェントごっこを

するくらい影響を受けた。

 

 

 

監督が同じというのもあるけど

アダムスファミリーが住んでそう。

と言われた場所に住んでいた頃の話。

 

はす向かいに

羽毛布団を体に巻きつけ、チャリで

町に繰り出しているおっさんが住んでいて

いつも茹でダコのように顔が真っ赤だったから

その奇行も相まって

火星人と呼んでいた。

 

真実を知っている。とばれたら

MIBにニューラライズされるんじゃないかと

ヒヤヒヤしたのは遠い昔。

 

宇宙なんてものに興味が無くなった

のはいつのことだが思い出せなく

なった頃。

  

通りを挟んだ路地の向こう。

表札がなく、名前すら

わからないアパートの一室が

今日はずいぶん賑やかだ。

 

うっすら、あの火星人を思い出す。

まさか同胞と

地球侵略について

打ち合わせでもしているのか。

都心から電車に揺られて約2時間。

最寄り駅から歩いて15分以上

太陽が差し込まない立地の

築何十年のアパートで地球侵略を企む

宇宙人。悪者なのに

スターを夢見て上京した田舎の若者

のような親近感を覚える。

 

メトロン星人のように

ちゃぶ台越を挟んでウルトラセブン

と会話でもしているのだろうか。

 

しかし、ドアの前に

いるメンバーは

アパートの大家を先頭に

警視庁と書かれた

上着を着たガタイの

いい二人組を引き連れている。

 

ウィル・スミスやトミー・リー・ジョーンズ

葬儀屋のようなスーツではないし

ウルトラ警備隊の面影はない。

 

そんな装備で宇宙武器に対抗できるのか?

常識的な出で立ちの疑問も

部屋の住人がただ

奇異の目で見ていただけの隣人

という繋がりしかなければ、百均で買った

軍手のように、記憶から抜け落ちてしまう。

 

「向かいに住んでるおじいさん。亡くなったみたいよ。」

 

その晩親に聞かされた不意打ち。

 

おじいさんは火星人ではなく

孤独な老人だった。

一人の不安を

紛らわすために酒を飲みすぎ

発作を起こした。

 

彼の赤ら顔は

地球の環境に対する副作用ではなく

ただの酔っ払って徘徊しているだけの話。

 

 寂しくなった。

彼がいなくなったから。

ではない。

彼が宇宙人ではなかった。ことに

 

信じたかった。

自分の物差しでは計れない出来事が

この世にはあるのだ。と

 

そして、自分と同じような

他人との間にズレがある人間の存在が

心のどこかで、心強かった。

 

あなたにはあるだろうか?

周りの人間が笑っているのに

自分だけが楽しめないような状態。

 

こいつらは何が楽しくて笑ってるんだ?

そう思わざるを得ない感覚。

 

まるで、周囲が自分とは違う

言語でしゃべっているような。

 

 

周りの人間と何かが違う。

それがなんなのかは説明できない。

 

自分が異常なのか。

自分は人間ではないのか。

頭の中でそんなやりとりを繰り返す。

答えが出るわけもないのに。

 

僕はなんなんだ。そうだ宇宙人だ。

 

宇宙人がいるのか。

ではなく、宇宙人にいてほしかった。

 

 

今もそれは変わらない。

世界の価値観がひっくり返るような出来事が

おこらなければ、ニートは市民権を得られないだろう。

 

それを得られれば満足か?と聞かれてもわからないけど

 

一秒間に地球を7周できる。と言われている光でも

届くまで、とてつもない時間がかかる距離がある宇宙。

 

その暗闇で、人類だけが孤独だとは思いたくない。

 

そんな考えが、大衆に受け入れられる日がきてほしい。