キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

頑張らなくていいよ(最終章 中編)

いつもの通り母親と話し、帰ろうとした時だった。

 

送っていくよ。

 

父親からの提案。耳を疑う気の利いたセリフに

 

トラップの匂いを嗅ぎ取ったけれど、ここで断ればへそを曲げて

 

嫌味を言ってくるのはわかっていたし、彼の顔は

 

 why so serious?と聴きたくなるほどで、断るわけにはいかなかった。

 

 

サーキットでライバルに勝つために作られた車はくつろぎなど眼中にない。

 

狭い。気まずい。友達の友達(初対面)と二人きりにされた時くらい気まずい。

 

しかしこちらはコミュ症歴20余年。焦らない。まだあわてるような時間じゃない。

 

会話に困ったら、そもそも会話をしない理由・・・窓からUFOを探せばいい。

 

アダムスキー型がまぶたをかすめた時、彼は前方から顔をそらさずに口を開いた。

 

今日の午前中に医者の問診があって、こう言っていた。

 

これ以上良くなることはないのは確かだけど

 

ここまで、(命が)持っているのは信じられない。 と

 

「お母さんはよくがんばっているよ」

 

リビングで酒を飲みながらテレビにぼやいているようないつもの口調。

 

 それは、 お母さんはがんばっているのに、お前はなんで頑張っていないんだ?

 

 という嫌味にも聞こえた。でもそこでカッとなって運転手に掴みかかり

 

コントロールを失った車が対向車線のトラックに衝突する・・・・

 

お昼のニュースにありがちなことwww になるのもつまらないから

 

口の肉を前歯で咬み怒りを抑えた。

 

確かにブログ記事の8割は死にたいと呟いている。おあつらえ向きじゃん。

 

さっさとやれよ。とあおる人もいるだろう。ところがギッチョン

 

 

僕はクズなのは認める。でも僕の死に方は僕が決められる・・・はず。

 

嫌いなやつと心中は嫌だ。

 

 だから、一言「そう」とだけ返した。うまい返しは見つからなかった。

 

電車の乗り換えがある駅まででいい。と言って、途中で降ろしてもらった。

 

息苦しい空間から出て、胸を開いて深呼吸した。

 

頭をそらせてみた空は排気ガスなど感じさせないような青色。

 

人生を呪いたくなる時は決まって天気がいい。何かの皮肉なのだろうか。

 

仕事の話 

 

彼のぼやきが耳の隅に引っかかりつつ、やらなければならないことに精をだした。

 

「頑張らないテキトーなバイト」 

 

みんな、おまえはいいよな。親の脛かじって生きていけて。と冷ややかに笑う。けど

 

こっちは君が思っている以上に必死だ。

 

 

白鳥は見えないところで無様にバタ足しているって聞いたぜ。

 

バイト。と言っても、一つのミスは即、死につながる。

 

最近だと、もうやってることが正社員と何が違うのかわからなくなってきた。

 

それでも、お前はバイトだ。という立派な社会人からの叱咤・・・

 

クズは一生正規にはなれないのか。

 

そういえば、「非正規をなくす」って言ったえろい人がいたっけ。

 

正規だろうが、非正規だろうが仕事は仕事だ。真面目にやらなくては。

 

そんな心をへし折るように、世の中は不都合な現実を突きつけてくる。

 

人出不足。いやさ賃金不足。最低賃金で3kをこなし、しんどい。を

 

諦めずにぼやく現場に

 

めんどくささを感じた会社が出した答えは、人出が足りている現場でお荷物に

 

なったやつを送ってくること。

 

やってきた人は森田健作にそっくりだった。親戚にいれば楽しいけど

 

仕事の同僚としてはかんべんしてほしいタイプの森田健作(以下 健作)。

 

自分の過去のどうでもいい自慢話を話すときは、キラッキラの少年のようになるのに

 

仕事のやり方を教えると、この世の終わりのような悲しい目をする。

 

災害本部をほっぽり出して自宅に帰ってしまいそうだ。

 

頑張ったけどミスしたとかいうレベルじゃない。

 

それもそのはず、以前の業種と比べると、給料が半分になってしまったから

 

やる気が出ないのだそうだ。顔が水に濡れて力が出ないヒーローかお前は。

 

若者が賃金低いからテキトーにやります。なんて言ったら

 

世間は「甘え 」「自己責任」「身の程」といったイシツブテ雨あられに降らせるのに

 

世間は、ゆとりとカテゴライズしておとしめるけど

 

現実には、甘えてわがままなのは、老人たちのほうじゃないか。

 

どうしてそんないい加減な生き方で、今まで生き残ってこれたんだ。

 

高い年金を払っても、こんなやつらのために使われてしまうのか。と思うと

 

怒りよりも疲れがでてくる。

 

そもそも、年を取っているから無条件で偉いという世の中にただよっている空気。

 

都市伝説じゃないか。と怪しんでしまう。昔の人が頑張ったから今があるというけど

 

今まともな生活が出来ているやつは、ただたんに運が良かっただけだろう。

 

それなのに、貧乏の血の池地獄であっぷあっぷしている人たちが

 

「ふまじめ」「甘え」「ゆとり」にされて苦しむのは間違っている。

 

頑張りすぎて疲れ切っている。その現実をいつになったら世間はわかるのだろう。

 

どこまで頑張れば頑張ったね。といってもらえるのだろう。

 

死ぬまで頑張り続けなければならないんだろうか?