キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

天国じゃみんな、海の話をするんだぜ。

脳腫瘍で余命わずかのマーチンは病室でたまたま隣に寝ていた

これまた末期の骨髄症患者のルディに言った。

「なんで?」「知るか。流行ってるんだってさ」

一体どこで天国のトレンドを耳にしたのかはわからない。

キッチンから盗み出した酒を飲んで酔っていたからかもしれない。

とにかくここから二人にとって、人生最大、最高の冒険が始まった。

 

見たことがないという人は人生の10割を損している。

どんな映画?と聞かれたら、宮藤官九郎氏のドラマ見たいな映画。といったら

わかりやすいかもしれない。彼が脚本したドラマのファンなら

少なくとも、損はしないだろう。

それか、バック・トゥ・ザ・フューチャーや、レオンといったバディームービー?

が好きな人にもオススメだ。

 

遠くに行きたい。という願望がある。なぜかわからない。

どこかに行きたい。というより、ここに居たくない。自分の現実を認めたくない。

ここから逃げ出したい。といったほうがいいかもしれない。

それで、別の場所に行けたとして、何も変わらないことなど、とっくの昔にわかっていたはずなのに。

 

それとも、生まれてこのかた、地元を離れたことがない事がコンプレックスに

なっているのだろうか。

僕は別に、木更津キャッツアイのぶっさんのような地元愛に溢れているわけではない。

なんだったら、この場所に飽き飽きしているはずなのに。

なぜか離れられない。正確には、ここを離れて、知らない土地で生きていける

生活力がない。まぁそんなたくましい人間が、ニートになるはずがない。

 

それでも、ここから離れれば、何かが変わる。とでも?

いくら別の場所に行こうと、自分という人間が変わらないなら、意味がない。

自分の居場所はここじゃない。と自分を探す旅にでかけようとでも思っているのか?

本当の自分。それは、この瞬間、駄文を書いている僕自身ではないか?

パソコンの薄明かりに反射する脂ぎってヒゲも伸び放題のおっさんを

どうして認めてやる事が出来ないのか?

いい加減認めろよ。この後に及んで何をためらう。

これがお前だとどうして認められないのか。

僕は終わってる。ここからは出られない。

それがどれほど苦痛なのか、なんて書いてもしょうがないけど。

 

 海は広いな。大きいな。

昨日も書いたが、どうしても、海という場所に強く惹かれる。

昔、といっても、去年の事だけど、江ノ島の景色は忘れない。

 写真があれば良かったが、僕のオンボロガラケーでとっても

いまいち綺麗に写らなかったので、その場で削除してしまった。

写真なんかあっても、見せる相手がいるわけじゃないし、

その時は、まさか僕がブログを書いている。なんて想像すらしていなかった。

まぁ、初めてみて、何かかが変わった。とか、良い方向に行った。

なんて事はないけど。

 

アジカンの藤沢ルーザーやピンポンの舞台になっていたり

天気予報でよく映ったりする場所になぜか行きたい。

スマイルが海岸沿いを走っていくあれをやりたかったのだ。

まさかチャリで行こうとは思わない。さすがに学習する。

行きはいい。見える景色が新鮮だから、でも帰りは、見知った

光景がいつまでたっても続く地獄とかす。

うん。さすがにチャリはやめよう。羽田は良くても

鎌倉では、日帰りできなくなってしまう。

それに、江ノ電にも乗りたかったしね。

 

事前に電車の時刻を調べ、年のために、朝5時に家を出た。

道中、驚いたのは

町田の駅前がものすごく都会だった事。

ぱっと見、渋谷と大して変わらない。

降りる駅間違えた?と思ったほどだ。

 

しっかりと電車を乗り継いで行けば、拍子抜けするほど

簡単に湘南についてしまった。

そのままモノレールに乗れば、江ノ島に着くのだが

ここまで簡単だと、逆に不安になる。

そう、僕の目的は江ノ電に乗る事だ。

5,6分迷って藤沢駅に着いた。

ホームには僕が子供の頃、よく行った駄菓子屋の婆さんみたいな、

こじんまりとした、レトロな車両が止まっていた。

外観は小さいが、中は案外広くて、窮屈さを感じなかった。

僕が乗った向かいの席にカップルが座った。

おのれぇリア充め。こんなところでも俺を愚弄するのか。

しかし、来年は俺もちゃんと就職して、彼女を連れてだな・・・・

残念ながら、お前の夢はどちらも叶う事はない。

 

そうこうしている間に列車が走りだした。

ガッタン、ゴットン。ゆっくり走る江ノ電

「次は、江ノ島です。」

アナウンスが告げる。しかし、僕はここで降りようとはしなかった。

どうせなら、終点の鎌倉まで行ってみよう。と思ったのだ。

ガッタン、ゴットン。最初は楽しかったが、だんだん不安になってきた。

まるで海が見えないのである。やはり、選択を間違えたか?

素直に目的地で降りたほうが良かったか?

そんな疑問が浮かび始めた頃

 

「次は、鎌倉高校前」

 

僕の不安は見事に消えていった。

目の前には、見事。としか言いようがない、水平線が広がっていた。

 

海だ。それも、苦い思い出とはまるで違う、想像どうりの景色。

その時の僕の心には、ずっと昔に忘れてしまった感情が蘇っていた。

子供、それも本当に小さな頃の、未来に希望以外持たなかった時の

 そこから3駅ほどは海を横切り、江ノ電はトンネルに入ったそこからは

街中、時には、家の真後ろを通過していく、裏路地が好きな僕には

嬉しい光景だ。特に、民家の間から見えた紫陽花がとても綺麗だった。

そして、鎌倉に着いた。そこではぶっちゃけたいした感動はなかった。

もちろん僕の回りかたが悪い。当初は江ノ島以外に行く予定がなかったので

それ以外は大して調べていなかったのだ。

 

銭洗弁天?に行こうとしたが、道がわからなかったし、これ以上歩いて

体力を消耗したくなかったので、再び江ノ電に乗り込んだ。

えっ!まじ電車賃の無駄じゃね?と思う人のために断っておくと

江ノ電には、「のりおりくん」なる一日乗車券があり

大人600円、子供300円で、江ノ電が一日乗り放題になるのだ。

まぁ頭がいい人にとっては、コスパがどうのの話になりそうだから、

この話は、ここでやめにして。

 

来た道を 引き返す。でも、前のような焦りはない。

やはり、電車に乗っている。というのが大きい。

乗り物にのって良かった。6月とはいえ、この暑さでチャリなんか漕いで

いたら、干物になってしまう。

 

江ノ島はとにかく坂が多かった。階段が高くて、移動するのに

エスカレーターがあるのだが、料金が払えないので

階段を使った。頂上にある神社にお参りしたが、効果があったとは思えない。

そこかしこに猫がいて、日向ぼっこをしていた。

犬猫が嫌いな僕だが、思わず顔がほころぶ。

展望台からは、島全体を見渡す事ができた。素晴らしい景色だったが

高所恐怖症の僕は、10分もいれば限界だ。

いつか床が抜けるのでは?と考えると気が気ではない。

 

その後、いくつか「のりおりくん」を使い倒すためにいくつか寄り道をして

湘南海岸前でおりた。

駅前はビルやら見上げるほど高いマンションが多かった。

ここに住んでいる人は勝ち組にちがいない。

一見東京と変わりない風景、しかし、進んでいくたび確実に、塩の匂いが強くなり、

海が近づいている事を実感した。

しばらく歩くと、道が開けて、目的地に着いた。

目の前に広がる海。最初は、遠巻きに見ている予定だったが

だんだん我慢できなくなった。

ビーチサンダルを持って来れば良かった。と思うと、そこは観光地。

ちゃっかりと売店あり、ビーサンどころか、水着まで販売していた。

 

家から持ってきたお昼を食べるため、飲食ができるか店員にきいた所

 

「トンビがいるから気をつけろ」

と忠告された。

 

海岸にビニールシートをひいて、家から持ってきたおにぎりを食ながら、

どこまでも続く水平線を見ていた。

 

 

見上げていた空と、いつも僕らがいる地上がとても近い。

ここからなら、空の上にいるあの人に近づけるかも。

 なぜ天国で海の話をするのかわかった気がする。

きっと彼らも僕らに会いたくて、海に行くのかもしれない。