キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

ニートは社会のゴキブリである。

暑い。

 

毎年言ってる気がするが、なぜ季節というのは丁度いい所で止まらないのだろう

6月上旬あたりの気温で止まっておけば丁度いいのに。

とにかく、汗だくの体が気持ち悪い。とりあえずシャワーを浴びて、一通り汚れを

落とし、上がる前に風呂場全体の水しぶきを拭こう。とした時

 

奴がいた。

 

大体、消しゴム一個分くらいの大きさで、遠巻きでもわかる体のヌメッとした

質感。あの独特の、カサカサ、カサカサとした

動きで、壁をはっている。

その瞬間僕は完全に感情を失った。ただ、冷静に、迅速に、蛇口をめいいっぱい

ひねり、シャワーヘッドをGに向けていた。

 

かの豊臣秀吉は、備中高松城の戦いで、敵方の城を攻め落とすため、長さ4キロ、

 高さ5mほどの堤防を作り、水攻めにしたし

 イラク戦争で米軍は装甲ブルドーザーとドーザーブレードを装着した戦車で

イラク軍の塹壕を埋め立てる作戦をとり、数千人を生き埋めにした。

 

これまで、正義という建前の元で他人から見れば

目を覆いたくなる行いをしてきた

人たちに蔑みの眼差しを向けてきたけど

今、自分も傲慢な人間だったのだ。という事を思い知らされた。

真上から振り下ろされる慈悲のない洪水になすすべもなく、排水溝に流されていくG。

これでよし。ほっとしたのもつかの間、あろうことか

Gが排水溝から抜け出してきたではないか!

右に左にあのキモイ動きをしながら、死角を目指すG

僕は映画フルメタルジャケットのヘリに乗っていたあいつの

ように、シャワーヘッドを奴に向け続けた。

 

逃げる奴はGだ!

逃げない奴はよく訓練されたGだ!

 

自由への逃走むなしく、Gは再び絶望へと吸い込まれていく。

念入りに水をかけ、何も上がってこないのを確認した後

ダ◯ソーで買った風呂用の網で力一杯蓋をした。

これで一安心。

いや、油断した途端、今度は100万匹ぐらい大量に押し寄せてこないよな。

ホラー映画でよくあるパターンだ。

大丈夫。ここは現実の世界だ。映画のような展開はしない。

いい意味でも、もちろん悪い意味でも。

 

Gの軌跡に手をつける気にどうしてもなれず、

先ほど残虐の限りを尽くした武器の本来の使い方をした

人間が便利だ。というものには、相反する悪用方がある。

空島の神ガン・フォールのいう通りである。

 

風呂場を一通り洗った後

ひと段落しても、先ほどの事件が引っかかった。

 考えたら、奴が一体何をした。というのだろう。

例えば、ヒアリや、セアカゴケグモのように毒があるわけでもない。

その他外来生物のように、生態系を破壊した訳でもない。

 

ただ、そこにいただけ。という理由で、いわれなき迫害を受ける存在。

 似ている。ニートに。

僕らは、存在する事で困る人間はいるが、喜ぶ人間はいない。

人家の暗がりに潜み、食べカスを食って生きている。

そう。僕は、自分の兄弟を殺したのである。

何がそこまでキモイのか。

なぜ奴らはここまで嫌われているのか。

やはり、見た目が多くのウェイトを占めている。あの奇妙に動く触覚。

そしてあの足、あの動き。全てが人間の嫌悪感を煽っている。

見た目が10割だという意味では、人間もGも変わらない。

 

 

しかし、これが例えばカブトムシやクワガタムシのような見た目だったら

よかったのだろうか?

彼らは、Gと違い子供から大人まで大人気である。

中には、海外に生息している種類を自らの手で繁殖させ、売っている

ブリーダーもいる。

 

僕も子供の頃は、よく、虫取りに出かけたし

自由研究でカブトやクワガタの生態を発表したりした。

ただ、彼らをひっくりかえしたフォルムは、Gと大して変わらない。

何が違うのか。

ツノが生えていればいいのだろうか。子供というのは、恐竜もそうだが、

小学生の頃はツノや牙がある生物、戦闘機や戦車、銃などに憧れを抱く

そして中高生になると、不良に憧れ、クラスの可愛い子は大体奴らにお持ち帰り

される事になる。*1

 ただ、彼らがかっこいいと思うものは常に、戦うためにある物

または反社会的な物であり、他者を傷つけ、命を破壊する物である。

 

そこから考えたら、Gのなんと穏便な事か。彼らはただ、残飯を処理しているだけ。

Gこそが、真の平和主義者。とも言える。

 

だからといって、明日から、Gをカブトムシのように扱うか?と聞かれたら

全力でNOと答えるのだが。

 

 星にとって不快害虫=人類である可能性

 エージェント・スミスは、

宿主の体を破壊し、なお増殖するウィルスに例えた。

僕の場合、星にとって人類はGと同じと言ってもいい気がする。

例えば、日々起こる自然災害は地球が

人類をスリッパでぶっ叩いているのと同じ感覚だったら?

僕らは、この星に、不快害虫だと思われているのではないか

いまだ利き腕に残る妙な感覚を噛み締めながら思った。

*2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:

既出かもしれないが、僕が嫌いなあいつと、初恋のあの子が、仲睦まじく

登下校していた光景は未だにトラウマである。

 

*2:

この記事を書くためにGを調べたウィキペディア

そこではGをペットにしていたり、

あろう事か食べている人もいるらしい。

背中がとてもかゆい。今まで経験してきた

あせもや湿疹とは違った感覚だ。