キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

カレンダー

今日は何曜日だっけ?ぼけたわけじゃない。

土日もなく働いていると週末も月曜日と違いはない。

曜日がわからないと、迷子になったような気分になる。

いる場所など変わらないのに、目当てではない建物に囲まれているような気がする。

家に帰って月初から二三日たったカレンダーに気がつく。

元旦はA⒋ノートぐらいの厚みがあった束も、めくっているうちになろう小説の内容

のような薄さになっていく。安物のカレンダー

僕が子供のころは個人商店がまだちらほらとあって

年末になるとカレンダーをよくくれた。その店の個性が満載のカレンダーをみるのは

意外と楽しく、年末がくるのを楽しみにしていたものだ。

今はもう、みんないなくなってしまって、カレンダーすらもかってこなくちゃならない

もちろん、安価に手に入るけれど、それで良かったのかは、首をかしげる

貴重品になった紙。使い道はないけど、金がかかっている。と思うと手放しずらい。

しばらく破いた紙を見つめていた。お前今月は何した。

去年の今頃やろうとしていたこと、一個でもできたか?

もちろん、コロナの影響もあるけれど、それがなかったところで何も

変わらなかっただろう。

1mmも進んでいない。この心だけが置いてきぼりで、月だけが 過ぎて

夏が終わり、冬がきて、また年末がくる。なんの喜びもない元旦が・・・・

それ以上考えるのはやめた。何も生まれない。疲れるだけだ。

 

水曜日だったと思う。父親から給付金がきた。というメールがきた。

玄関で渡せばいいのに、中に入れ。と言われ、リビングへ。

彼は茶色の封筒を取り出した。そこにはなぜか、父親と僕の健康保険の額が

一緒になって印刷されていた。彼と僕の年収も。

お前、この年収でどうやって生きて行くつもりだ?もう30だろ?

考えたくない。考えなかった罰をうける。

うん。うん。と頷いて、その場から逃げた。

 

帰り道で叫ばずにはいられなかった。わかってるよ。

わかりきっている。でもどうにもならない。

いや、どうにかしなかったのか。

これまでなんの考えもなしに破いてきた紙は

けして取り戻せない大切な時間だった。

のしかかってくる年齢という現実。

泣くなよ。30のおっさんが。

今日も日が暮れる。それでも、無駄にカレンダーをめくるしかないのだけれど。