キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

天気の子

曲だけ知ってるって映画やアニメってない?

前々前世もこの映画のタイトルかと思ったけど、それは

君の名はの話でタイトルじゃないのね。ごっちゃになってた。

流行に乗り遅れるどころか、終電を逃した感は否めない。

でも、重苦しい現実からグランドエスケープしたくてDVDを借りたわけさ。

物語の舞台、コンクリートジャンゴー東京は8月だというのに、降り続く雨のせいで

そこに暮らす人々の気持ちも湿っぽい感じ。

主人公穂高は16歳の高校生。故郷の島を家出して、憧れの大都会にやってきた。

身分証もなく、バイトもできず、わずかなお金もつき、ファストフード店

イートインでただのしかばねになっていたとき、ハンバーガーをくれたのが

ヒロインのヒナであった。

お目目くりくりの男たちの妄想と理想を押し付けられた、フェミニストが見れば

憤怒の炎を燃やしそうな、(実際燃やしていた)

ひなタンに、穂高はもうゾッッコン。

しかし、ひなたんには

オタクアニメにありがちな悲しい運命が待ち受けていたのだ・・・

 

物語は全体的にキレイ目のコーディネート。

ボーイミーツガールの輝きが眩しすぎて、石の裏にいる

ダンゴムシのようなブログを書いている奴には

千の太陽で焼かれているような2時間半であった。

 

物語については他の一流ブロガーたちが設定の考察までしているので

特に語るべきところはないのだが、どうしても気になった点がある。

それは主人公穂高が、コンクリートジャンゴー東京の冷たさに潰されそうになった

時に出会う雑誌編集者 ケイの愛人(DVDチャプター1時点)なつみである。

いわゆる年上のせくしーなお姉さんキャラなのだが、問題はその滑舌の悪さだ。

主人公穂高にケイのことをたずねられた第一声が

 

「私とケイちゃんの関係?きひのそーそー《*◯〆」

 

なんて?

 

シークンバーを巻き戻して、再度聞き直す・・・

岡崎体育風に言う。

なんて?

何度聞いてもほとんど聞き取れない。諦めて再生ボタンを押したが、他のセリフも

ほとんど棒読みで感情がない。

これがキュアゴリラレベルのチョイ役なら

まだ救いがあったけど、このナツミがっつり物語にかかわってくる。

つまり、観客はこのお遊戯会に二時間付き合わされるだ。

雑誌編集者のケイ役の小栗旬氏は通販で買った木刀で戦うジャンプヒーローだったのでケイの気だるげな雰囲気をうまく出していたと思う。

ついこの間まで、鈴蘭のてっぺんを取るために血みどろの争いを繰り広げていた男とは

思えないギャップだ。 

 だからこそなるナツミのちょ、もう一回言って感が目立つ。

正直、わざとやっているのか?という疑義すら抱いた次第だ。

ここまで滑舌が悪い知的生命体は地球では長州力氏ぐらいだろう。

もしかしたらアテレコしているのは、長州力氏本人?・・・

ではなく、本田翼氏であった。

確かに、本田翼氏は神が遣わした天使であるから、演技が下手だろうが棒読みだろうが

世の男たちは許してしまうのは仕方がない。

しかし、この棒読みは・・・・あまりに・・・と思ったら

物語中盤でなつみがケイに駄目出しをするシーンの暴言の数々は、大学生女子が

カレシをなじっているようで妙にリアルであり

かつ全てのセリフを的確に聞き取ることができた。

けっして重要でもない、男女のケンカというグロテスクなシーンでなぜ・・・・?

確かに長州はかの藤波と激闘を繰り広げ、常にライバル視していた・・・・

そういえばドラマショムニの撮影現場で江角マキ子氏は、大天使本田翼が

台本を覚えてこない。と周囲に漏らしていたと聞く、大先輩への反逆。

滑舌の悪いキャラ、本田翼、小栗旬、クローズ、長州力・・・・・なるほど。

 

つまり本田翼は、小栗旬をライバル視しており、密かに対抗心を燃やしてた。

この棒読みの演技と滑舌の悪さはブラフ。小栗旬への宣戦布告だったんだよ!

 

な、なんだってー!

 

さぁ、展開は変わった。

天気の子は、もはや甘酸っぱい青春アニメなどではない!

見える!みえるぞ!

小栗ィイィイ!本田ァアア!という二人の咆哮が!

バチバチと火花が散り、二人の視線に交差するメンチビームは雨など吹き飛ばす眩しさだ。

千の太陽に焼かれるってそういう・・・・

 

 

それにしても、劇中の滝谷VSリンダマン戦以来のアツイバトル。

監督はどう思っていたのだろう?

天気の子の終盤

主人公穂高はひなタンの悲しい運命を変えるために走り出す。

これはクローズzeroの名シーン

鈴蘭のボス、芹沢に向かっていく滝谷源氏のオマージュである。

 

そう。主人公穂高は、てっぺん目指して飛んだのである

バラバラだった点が一本の線に繋がった 瞬間だ。

つまりこの天気の子は、根暗なオタク少年のまま大人になってしまった

監督の遅れてきた反抗期・・・・

 

大人達のいいなりになり、よい子を演じてきたけれど、その実は世界を延命するために

犠牲になるしかない。つめてぇコンクリートジャンゴォの常識を押し付ける世界への

アンチテーゼ。パンクじゃないか。

 

今なら見える。

タイトルロゴの後ろにはっきりとそそり立つ、新海誠の中指が。