キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

ブログ界の第一デパートに、俺はなる。無職の愚痴ブログぐらいあったていい。

時計の音がうるさい。僕が生まれた時から時を刻んでいた壁掛け時計。

その規則的なリズムはまるで大きなノッポの古時計のようにバカでかく

部屋中に響く。

 

常人なら大した事はない。でも、現職が無職の僕には

外界の音はすべて不愉快だ。幼稚園児の笑い声。石油屋の軽トラが

町中を回りながら流す雪やこんこ。そしてこの、ちくったくっという規則的なリズム。

ウルセェな。いっそ電池を引っこ抜いてやろうか。

何度か手に取ったけどできなかった。

生まれた時から動いていたこいつを止めれば

僕の人生まで動かなくなる気がして。

 

 

昔からあったものが消えていく。

あって当たり前だと思っていた物。いて当たり前だと思っていた人。

いずれみんないなくなってしまう。

それが頭に浮かぶと、両目から涙が止まらない。

万人がこうなるとは思わないけど、古いものを懐かしむ気持ちは

共有できると信じる。

ノスタルジーという言葉があるくらいだから。

 

無職といっても、洗濯や掃除をするには

午前中から活動し始めなければ、家事はとても終わらない。

午前7時に起きたはずなのに、洗濯をし、お湯を沸かし

洗濯が終わればそれを干して、その後掃除・・・・

気がつくと、時刻は11時。いつの間にそんな時間が経った?

そういえば、今日はスーパーの特売があったんだ。

卵がもうない。200円以内で買える今日を逃せば

来週までホットケーキはお預けだ。

 

上り坂で相手を振り切ろうとするオーバードライブの篠崎

*1のように

 

チャリを漕ぎついたスーパー。目的のブツは跡形もなく消えていた。

 

家の鍵を開け、辿り着いた玄関に座り込みかつて

あったであろう母さんの苦労を理解する。

遠い昔の女は一日中家にいればいんだから楽でいいよな。

と愚痴られていた日々を思い出す。

それは違うんじゃ・・・と心の片隅がつぶやいたけど

反論するのもめんどくさく、そうっすね。と返していた。

あの時の僕も、うっすら思っていたのだろう。

金を稼いでいない人間はみんな楽をしている。

身につけた知識の底の浅さを後悔しても

過ぎてしまった日々は取り戻せない。

 

他人の事がどうかは知らない。ただ、

昔は自分が見えない範囲で暮らしている人は

みんな楽をして生きている。と思っていた。

 

無職になってわかったのは

人間が生きるというのはそれだけでとても大変なのだ。ということ。

世間がよく言う、正規とか、非正規とか、パートとか主婦とか

関係ない。みんな立派だ。

 

問題はそれを理解できたのは、この世の底辺に落ちた

時だったという事。

今の僕は、ちびまるこの山田くんがマジ、しんどい。と

言っても否定する事はない。

 

この部屋からは全ての人が輝いて見える。だから外の音がうるさいのだ。

この世界の全ての人が幸せな気がして。僕以外の。

 

カッチ、コッチ、コタツの天板に突っ伏していたら

余計に時計の音がでかくなっていく。いったい僕は何をやっているんだ?

今年もあと1ヶ月しかない。自分の状況はまるで好転しないのに、時間だけは

前に進んでいる。だからこんなに時計の音にムカつくんだろう。

この先僕はどうなるんだ?来年もこのままなのか。そんなのは嫌だ。

嫌だ。何もかも。

 

部屋の中に居たくない。かといって近くにも行きたくない。

できるなら遠くに行きたい。

もっといえばそのまま消えてしまいたい。実行する金がないのは

幸運なんだろうか・・・・

 

考えるのは疲れた。

そのまま電車に飛び乗る。最近この乗り物が好きになってきた。

地下鉄の路線図を見ているとワクワクする気持ちわかる人いる?

あの地図は見ていて楽しい。行くとなったら大変だけど。

そしててやってきた街。立川。

小さい時は夏休みにここで映画を見たり

デパートでおもちゃ買ってもらったり

したっけ。

 

再開発の影響で、僕が子供の頃よりも風景は少し変わった。

新しいものができたり、前からあったものがなくなったり。

 

第一デパート。という商業施設をご存知だろうか。

立川の北口にあった、小汚い

レトロな雰囲気の建物。説明がめんどくさいので色々省くけど

要は、中は昭和テイストなエスカレーターが駆け巡り

今の商業施設のように、整頓された作りではなく

案内板もないから度々道に迷うんだけど

その分、ハクスラ系のゲームのようなワクワク感があった。

誰が買うのかわからないほどマニアックな品揃えの専門店が並ぶ。

僕はここに入っていたプラモ屋の

アーマードコアのプラモデルが飾られたケースを

眺めるのが好きだった。

 

無くなると聞いた時は、なんとも思わなかったけど

実際存在しないところを見ると、とても寂しい。

 

人間はめんどくさい生き物だ。存在するうちはなんとも思わない。

なくなってからなぜ。と悔やむ。それは建物も他人も同じ。

 

それはブログにも当てはまりはしないか。

最近の商業施設は綺麗だ。避難経路とか考えたら

そうせざるをえないんだろうけど、整い過ぎて人間味がない。

人間味がないのは、面白みがない。

もちろんフードコートは好きだけどね。

 

このブログは、誰に必要とされるか分からないほど

マニアックだけど、誰にも必要とされていないわけじゃない。

少なくとも、読者はゼロにはならない。

書いてる本人が楽しんでいる。

なら、ブログの第一デパートに僕はなる。

 

帰宅した後、電灯に照らされ壁掛け時計。

27年も壊れずに時を刻み続けた古き良き日本の物作りの

結晶を、少し拭いてやった。

そこにあるうちは気にしなくても

なくなったら悲しい。

 

僕の寂しさを埋めようと必死になってくれている

この音を

少しでも長く聞いているために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:

2005年〜2008年まで、少年マガジンで連載されていた安田剛士氏の自転車競技漫画。アニメ版のOP少年カミカゼの歌う)WINDER ~ボクハココニイルを久しぶりに聞いたら涙が出てきた。