キリギリスはなぜ死んだ?

社会に、いらね。と言われた奴の最後のあがき

一夏の恋を始めたいなら、窓の戸締りに注意せよ。

セミが鳴き始めた。今年もリア充以外には、暑苦しさしか残らない

季節の始まりだ。

 

麦茶を作ろうとしたら、変えのティーパックを切らしてしまった。

しくじった。サウナとかした四畳半、涼を求めて手を伸ばした

扇風機も、運んでくるのは熱風だけ。

まるで蒸し風呂の、タオルでなんかバサッ!バサッ!するアレみたい。

全く嬉しくない。僕はサウナーではない。

 

この状況で

天然ミネラル麦茶を取り入れられないのは、死を意味する。

 

しかし、近所のスーパーで買うとしても、ポイントカードは親と共に

出勤してしまった。シビアな一家の経済シムは

1ポイント=1円の損も許さない。

 

でも喉は渇く。しかたない。近所のコンビニに買いに行こう。

100円セールのおにぎりを土産にすれば、機嫌をとれるかもしれない。

目的地はわずか数100m先、テキトーな格好でいいか。

まぁ、まともな服装なんて検討もつかないけど。

 

7~8年前にスーパーでお母さんに買ってもらった

緑のポロシャツと緑のズボンをつけると

上下緑色をした、とっちゃん坊やが爆誕した。

 イメージとしては南国生まれの恐竜の男の子に近い。

 

母さん、20過ぎたら、人間の成長は止まるんです。

すぐに大きくなるんだから。ってヒップホッパーみたいな

でかいのを買ってこなくても・・・

 

緑地なら迷彩効果は抜群。

コンクリートジャングルでも有効かわからない。

実験してみよう。幸いここは戦場じゃない

永遠の5歳児が歩いていたところで、射殺される心配はなかろう。

 

窓の鍵を閉め、ガスの元栓を確認し、用を済ませた後

家を出る。

 

思い返せば浅はかな判断だった。あんな事になるなんて。

 

出会いは突然に

出かける前の予想とは違い、室内と比べたら外はマシだった。

特にズボンは夏用をチョイスしたせいか、風が抜けていくのを感じる。

 

店の中は地球環境完全無視の涼しさ。

まぁ、冷房28度設定も根拠はないらしいし、多少はね?

それにしても涼しい。

特に下半身。寸足らずの裾で冷気を防げないのか。

 

外との気温差に慣れていないのだろう。と納得し

冷蔵庫から1ℓのペットボトルを2本取り出して

カゴに入れレジへ。

 

でも、今日は混んでいる。昼前ならわかるけど、なぜ?

両手に一本ずつとはいえ、長時間持って並ぶのは勘弁。

どうやら、清算を行う奴が手間取っているらしい。

 

「お次のお客様どうぞー」

室内犬のように震える二の腕をかばいながつつ、どんなバカだよ。

とイラついいて、呼ばれた方へ向かうと

 

「い、いらっしゃいませ・・・」緊張している声で僕を迎えたのは

デビュー当時の北乃きいによく似た女の子だった。

どこにでもいそうで、どこにもいない。そんな雰囲気。

かわいい。超かわいい。

 

「150円が一点・・・100円が・・・」ぎこちない感じがかわいい。

心なしか、僕を見て微笑んでいる。ような気がする。

重要なのは、彼女の頬にエクボができた。という事実。

笑った理由がグリーン坊やへのさげすみでも、かまわない。

 

清算を終え、一生懸命、袋づめしてくれる彼女、かわいい、超かわいい。

僕の近くにこんなドストライクな子がいるなんて。

 

ここに通い詰め、顔見知りになり、ゆくゆくはそう・・・

などど、アイドルの握手会に並ぶオタクにありがちな妄想をしながら、

灼熱のアスファルトへ戻っていく。

 

鼻歌でオレンジ・レンジの上海ハニーを歌うほど上機嫌だった。その時は。

歩きながら異変に気づいた。

どうにも涼しい。というかスースーする、特に股間。

ちょっと待て。行きがけに用を足した時、僕はファスナーを閉めたか?

 

 彼女の笑顔、ちょっと引きつっていたのはなぜだ。

 

恐る、恐る確認する。

開け放たれたズボンの窓から、白ブリーフがこんにちは。していた。

 Stop the season in the san

残念ながら僕は、TUBE世代にかすりもしていないため

この曲しかわからない。

けど、夏よ。逃げないでくれ。という思いは一緒だ。

ただ、僕の場合、追いかけたり、もう少しこのままでいたら

通報されかねないリスクを負うのだけれど。

 

 夏の終わり

君に約束してほしい事がある。

 

服装が上下、ガチャ◯ンでもいい。エネルギーボールから元気をわけてくれ。

 

出かける前に家を見回るのは大事だ。ただ、ないがしろにしてはいけない確認は

他にもある

 

社会性のない生活を送っていてもいい。でも、社会の窓の戸締りは確認してほしい。

さもなければ

七日間しか生きれない命よりも早く、一夏のエンディングを迎える羽目になる。

 

希望を見るとしたなら、彼女の視界を汚したであろうブリーフ。

それをボクサーパンツだと勘違いしている可能性にすがろう。